・橘樹慎司[たちばな・しんじ]
妖狐の青年。16歳だが、未就学(ただし、真琴同様中学校卒業レベルの知識を持つ)。橘樹氏は元々亀甲による卜占を司る貞人(占い師)の家柄で、物見神社の神職家が天野氏を除いて途絶して以来、代々力が衰えて行く族長を補佐して来た。そのため異変の際は橘樹氏の家人の協力がどうしても必要になってしまい、歴代の族長は彼らに依存してきた経緯がある。気が強く意地っ張りであるが、その一方で優しい一面も持つ。令の幼なじみで、浦藻が結果的に令の人化を許してしまったことに対して恨みを抱いており、今回の一件にもかたくなに協力を拒む。・藤森令[ふじもり・れい]<故人>
妖狐の少女。生まれつき変身能力以外の妖力がなく、両親に疎まれていたが、13歳の時に狐の姿で外に出た際、学校でいじめに遭いものみの丘の上の三角点に寄りかかって泣いていた美汐と出会ったことから、「妖狐として役立たずならせめて人間として彼女を助けたい」と思うようになり、族長の仕事に不慣れだった浦藻を欺き、人化の術の秘法が書かれた古文書を見て、身の破滅を知りながら人化。美汐と交誼を結ぶも、運命に逆らえず消滅してしまい、帰ることはなかった。[コメント]
《登場人物の設定》
今回は、前回ちらりと予告した妖狐のオリジナルキャラクター・橘樹慎司と、第二話「盟神探湯」で名前だけ出た美汐と過去出会った少女・藤森令の設定を公開しています。まあ、中身的には物語の中でほとんど話してしまっていますが……。
現在の設定では妖狐は浦藻・真琴・慎司の三人だけになっていますが、実は当初、妖狐一族の人数についてはあまり深く考えていませんでした。しかし、実際に話を書き始めてみると、ほとんど一同の前に顔見せるのは浦藻と真琴だけ。そうなると、何人もいるのに全然顔見せすらない、というのもそれはそれでおかしいわけですよ。当初はそういう顔合わせの話も入れようかと思ったんですが、後づけの感否めず……。そんなわけで、浦藻・真琴とこの慎司の三人だけという設定に落ち着きました。
令の姓はともかく、慎司の姓が「橘」ではなく「橘樹」という微妙に読みづらい表記なのは、実は人数を決めていなかった時代の名残です。実はこれ、武蔵国の郡名で、現在の神奈川県川崎市と横浜市北部あたりに該当する地名です。氏族の数をかせごうと考えていた時、ふっと武蔵国の郡が使えるなどと思ってしまい、「多磨」「入間」など著名な郡名を除外して姓を作り、「荏原」「都筑」「久良」「横見」「賀美」「幡羅」などの姓を用意していたのです。慎司の「橘樹」姓はその名残というわけです。
それにしても何で武蔵国の郡名で姓をつけようと思ったのか、思い返してもよく分かりません。どうせつけるなら、南森市のある福島県が属する陸奥国の郡名をつければよかっただろうに。
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